疲労と不調

疲れをとる睡眠法(質編)

疲労回復を促すためにまず取り組むべきことの一つが睡眠不足の解消です。前回は大前提として「量」の上に「質」が成り立つことをご紹介しました。

第二弾となる「質編」は睡眠時間を確保したうえでより良い睡眠をとるための方法をご紹介します。

睡眠の質は2つの要素で決まる

睡眠の質は「寝つき」と「中途覚醒」の二つの要素で決まります。
質の良い睡眠が取れている人は、寝つきが良く基本的に夜中に目を覚ます(中途覚醒)ことなく元気に朝を迎えることができます。

寝つきと中途覚醒を改善する

では、寝つきを良くして中途覚醒を減らすにはどのようにすればよいでのしょうか先に結論から言うと、寝つきを良くするには神経の興奮を抑えることと、中途覚醒を減らすには夜間低血糖を改善することです。

寝つきをよくする=興奮の抑制

寝つきを良くするためには、いかに神経の興奮を促す習慣を減らし、抑制できるかにかかります。

カフェインを控える

まず、神経を興奮させる代表格となるのがカフェインです。カフェインは眠気を阻害し、交感神経も刺激してしまいます。

朝やスポーツなど活動的に過ごしたい場合には良い効果を得られますが、睡眠においては質を低下させてしまうのでカフェインを摂取するタイミングに気をつける必要があります。

カフェインの血中半減期(効き目が減るまでの時間)は個人差もありますがおおよそ8時間程度と言われていますのでカフェインの最終摂取は就寝から逆算して8〜10時間にしましょう。
仮に22時に就寝する場合は、遅くとも14時以降はカフェインの摂取を控える意識が必要と言えます。

神経の興奮を抑制する栄養素

神経の興奮を抑制するのにオススメなのが、マグネシウム、カモミールティー、GABAなどです。

マグネシウム

マグネシウムは神経の興奮を抑制する作用を持っており、睡眠障害に重要な栄養素なのでマグネシウムを多く含む食品やサプリを積極的に摂りたい

カモミールティー

カモミールは古くから精神安定剤として利用されている薬用植物です。
産後うつや睡眠の質の改善に効果が期待できます。

また、カモミールティーなどのお茶に含まれる「テアニン」と呼ばれるアミノ酸にはリラクゼーション効果があり、これも睡眠の質改善に繋がる。

さらに、テアニン単独だけでなく次に紹介するGABA(ギャバ)と呼ばれる抑制性神経伝達物質を併用して摂取するとさらに効果を高めることが出来ます。

GABA(ギャバ)

「GABA」とは、Ganmma Amino Butyric Acid (γ-アミノ酸)の略。

緊張やストレスなどを和らげて、脳の興奮を鎮める働きがあると言われています。また、GABAには睡眠の質を高めたり、血圧の高めの方の血圧を下げる機能があることが報告されている。

入眠の30分ほど前にGABAをサプリなどで摂取することで、寝つきをよくしノンレム睡眠を延長する可能性があるとされている

朝日を浴びる

朝日を浴びることで網膜に対する光刺激が入り、それにより脳の松果体と呼ばれる部位で「メラトニン」と呼ばれるホルモンが合成されます。
メラトニンは脈拍、体温、血圧を低下させて睡眠へ誘導する作用を持っています。

メラトニンの合成から分泌には14〜15時間程度必要なので、朝日を浴びることでちょうど就寝前にメラトニンが分泌され始めることになります。

中途覚醒を減らす

中途覚醒を起こす原因の一つに「夜間低血糖」があります。
夜間低血糖とは、睡眠中に起こる低血糖のことです。糖尿病の患者に多い症状ですが一般の人にも起こることがしばしばあります。

はちみつとプロテイン

夜間低血糖を予防するためにオススメなのが

  • 就寝前のはちみつ大さじ1杯(純粋はちみつや生はちみつ)
  • ホエイプロテイン

などです。

はちみつはブドウ糖と果糖などの単糖類で出来ていますが、大さじ1杯程度であれが取り過ぎにならないことと、ブドウ糖単体もしくは果糖単体ではないので血中から細胞に取り込まれるスピードが速いため、血液中の滞在時間が短く血糖値が急激にあがることを防ぎながらエネルギー源となってくれます。 

神経抑制作用が期待できるカモミールティーに溶かして飲むのもオススメです。
※注意点としては純粋はちみつと呼ばれたり生はちみつと呼ばれる人工甘味料を加えられていないものを選ぶことです。

プロテインは摂取することでトリプトファンと呼ばれる体内では合成できない必須アミノ酸を摂取することができ、このトリプトファンは前出の「メラトニン」の原料となります。
朝日を浴びてメラトニンの合成を促しても原料がなければ生成することが出来ないのでプロテインやサプリなどで補うのも効果的です。

大前提として日中の食生活を正す

はちみつやプロテインで夜間低血糖を予防することはある程度可能ですが、大前提として日中の食生活を正すことが必要です。

コルチゾールの無駄使いを減らす

夜間低血糖になりやすい人というのは、日中に副腎皮質ホルモンの一つ「コルチゾール」を無駄遣いしてしまっている人です。

コルチゾールは血糖値の調整や代謝の調整、抗ストレス、抗炎症などの働きをもっています。

夜間就寝中に何も食べていなくても血糖値が一定に保たれているのはコルチゾールが分泌されているおかげなのですが、日中に糖質中心の偏った食生活をしている方や、強いストレスに長期間晒されているとそのたびにコルチゾールが分泌されて夜間就寝中に必要な分が残っておらず夜中に血糖を維持できずに夜間低血糖をおこしてしまいます。

就寝中に適切なタイミングでコルチゾールが十分に分泌されず夜間低血糖を起こすと、代わりに副腎髄質ホルモンのアドレナリンやノルアドレナリンなどが分泌されて血糖値の維持が図られるのですが、このアドレナリンやノルアドレナリンなどの副腎髄質ホルモンは交感神経を活性化させ血糖値のみならず、心拍数や血圧なども上昇させてしまうので中途覚醒の原因の一つとなります。

したがって、日中の食生活改善に取り組むことはコルチゾールの無駄使いを減らし、夜間の血糖値を安定するので、中途覚醒を減らすことが出来るようになります。
ストレスに関しても、極力減らす対処(ストレスコーピング)をしましょう。運動や趣味、レジャーで発散したり、ストレスと感じていることを具体的に書き出すなどして、何がどの程度の割合でストレスと感じているのかを客観的にみたりするだけでも原因の特定や負担軽減につながることもあります。

まとめ

今回は睡眠の質の向上を図るために、寝つきを良くすることと、中途覚醒を減らすための方法をご紹介しました。

神経の興奮抑制や夜間低血糖を防ぐためには、カフェインを摂取する時間の調整やマグネシウム、ハーブティー、はちみつ、プロテインなどを利用することで効果を期待できます。

しかし、大前提として日中の食生活が改善されていないと思うように睡眠の質は上がってこないので、バランスの良い食事や生活リズムを整えることにも同時に取り組んでいくことが必要です。

ABOUT ME
恩田陽輔
鍼灸師。 慢性的な不調や痛みは、疲労の蓄積による回復力を失っている状態と考え、鍼灸治療だけでなく疲労を取り除くためのストレッチやエクササイズ、栄養の知識なども治療プログラムに組み込んで提供しています。 【認定、修了】 ・FMS/SFMA ・Reformer For Motor Learning ・臨床ドライヘッドスパ協会認定