スポーツなど運動をした後や慣れない作業をした後などに感じる「疲労」は通常しっかり食べて、寝て、休むと比較的すぐに回復します。
しかし、6か月以上にわたり、疲労感が続く、あるいは疲れが繰り返されている状態の「慢性疲労」と呼ばれるの疲労の場合は、
- 寝ても疲れが取れず
- いつも体が重だるくやる気がでない
- 物忘れが増える、集中力がなくボーっとしてしまう
などの症状が伴い、なかなかすぐには回復してくれません。
これは、単純な疲労と慢性疲労とでは疲労している「部位」に違いがあるためです。
慢性疲労は脳の疲労
単なる疲労の場合は、使い過ぎた筋肉や内臓などの組織に疲労物質が溜まった結果、重だるさや筋肉痛などが出る、局所的な「末梢レベルの疲労」であるのに対し、
慢性疲労の場合は、長期間のストレスや疲労によって、脳が機能低下を起こし、自律神経のバランスを維持する能力まで低下してしまった「脳レベルの疲労」状態なのです。
長期間のストレスで脳は萎縮する
長期間のストレスや疲労によって、脳が機能低下を起こすと書きました。
人はストレスを感じるとそのストレスに対抗するため、副腎と呼ばれる臓器からコルチゾールと呼ばれる抗ストレスホルモンを分泌します。
しかし、脳などの神経細胞はこのコルチゾールを長期間浴び続けると壊れてしまうことが分かっています。
現代人の生活は、職場の環境や食生活の乱れ、寝不足、運動不足などによって長時間、強いストレスがかかり続ける傾向にあります。
この状態が長期間続くと、コルチゾールの分泌も過剰となり、やがて脳の神経細胞にダメージを与えて、脳を萎縮させ、次第に機能低下を起こして、体にも影響がでてきます。
たとえば、脳の海馬と呼ばれる部位にはコルチゾールのレセプター(受容器)があり、過剰となったコルチゾールの影響を受けやすい部位です。
海馬には、記憶を仕分けする働きがあります。
日常的な出来事や学習したことなどの情報は一旦海馬が預かって、整理してから大脳皮質へ渡しており、短期記憶から長期記憶に移行させるための重要な場所です。
そのため、海馬がダメージを受けて働けなくなると、記憶の整理ができないために新しい記憶が定着せず、すぐに忘れてしまいます。
これが慢性疲労を抱えている人に起こる、「物忘れ」に繋がっていると考えられています。
脳の機能低下のサイン
もう一つ、脳が機能低下を起こしているサインの一つに「過緊張」があります。
姿勢維持や運動に関する脳の働きに、筋肉の緊張とリラックスをコントロールするというものがあります。
それらは通常、無意識に調整されており、
- 緊張は、脳幹と呼ばれる部位で交感神経を介して担当
- リラックスは、大脳皮質(前頭葉)と呼ばれる部位で担当
しています。
そして、大脳皮質は脳幹の活動を抑制する働きをもっており、大脳皮質と脳幹がバランスよく働く事で、状況に合わせて丁度よい筋肉の緊張を保って姿勢維持や運動を行っています。
しかし、脳が疲労して機能低下を起こすと、大脳皮質による脳幹(交感神経)の抑制ができなくなってしまい過緊張を起こしてしまいます。
過緊張を起こしている人の特徴としては
- 呼吸が浅く速い
- 反り腰や見た目上の猫背
- 頭が前方に突出している
- 肋骨が浮き出ている
- 起床時に首や腰が痛い
などがあります。
その為、慢性疲労から回復するためには、極力ストレスを取り除くことは大前提としてありますが、並行して大脳皮質を活性化し、過緊張を抑制する(=脳疲労を取る)ことが大事なキーポイントとなります。
脳の疲労をとるには
脳の疲労を取るには基本的なエネルギー源となる酸素と糖、そして感覚刺激が必要と言われています。
言い換えると、適切な
- 「呼吸(酸素)」
- 「栄養(糖)」
- 「運動(感覚刺激)」
が入ってくると、脳が活動する為の燃料が行き渡り、機能低下が改善され、
その結果、過緊張が抑制されて脳の疲労が取れると言えます。
そのため、慢性疲労の方はただ寝て休むだけでは回復することはできません。
まとめ
慢性疲労からの回復に必要なことをまとめると、
前提として
- 可能なかぎりストレスから逃げる
- 自身の体をケアする時間を設ける
- 好きなことをして気晴らし
することで肉体的、精神的ストレスを減らし
- 呼吸を整える
- 偏った食生活を見直す
- 運動で感覚刺激を与える
することで、脳へ燃料を供給して過緊張を抑制し、疲労を取りのぞくことができます。
輔-task-鍼灸院では、肩や腰の痛みなどの症状と一緒に慢性疲労を抱えてしまっている患者さまにも対応できるように、症状のある部位の治療と並行して、「呼吸エクササイズ」や「体の使い方を整える」運動を行っています。
また、セルフケアとしてご自宅で出来るオススメのエクササイズや、ツボのご紹介、慢性的な疲労や症状から抜け出すための栄養の知識などを一人ひとりの体の状態に合わせて 「パーソナルリカバリーブック」としてお渡しいたします。